ホテルコンバージョンとは オフィスビルをホテルに変える流れと向いているビル

COLUMN

ホテルコンバージョンとは
オフィスビルをホテルに変える流れと向いているビル

事務所ビルを建て替えずにホテルとして使い直すときの、工事と手続きの全体像をまとめました。工事と不動産の両方を手がけている立場から、最初に知っておいてほしいことを書いています。

オーナー様向け / 用途変更・コンバージョン

ホテルコンバージョンは、オフィスビルなどを取り壊さずに、宿泊施設として使えるように改修することです。事務所の空室が続いているビルや、社員寮・保養所として使わなくなった建物で検討されることが多く、私たちのところにも「このビルはホテルにできるか」というご相談が届きます。ただ、どの建物でもホテルになるわけではありません。この記事では、向いている建物の条件、事務所からホテルに変えるときに厳しくなる決まり、相談から開業までの流れを順に説明します。

ホテルコンバージョンは用途を変える改修のこと

コンバージョンは「用途の転換」という意味です。ホテルコンバージョンは、建物の使い道を宿泊施設に変える改修を指します。新しく建てるのではなく、今ある柱や床、外壁を残したまま、内装と設備を入れ替えて客室をつくります。

建て替えと比べると、解体と新築の工事がないぶん、工期と費用を抑えやすくなります。一方で、建物はもともと事務所として建てられているので、階段の数や窓の位置、配管の通り道がホテルの使い方に合わないことがあります。そこを工事で補えるかどうかで、実現できるかが決まります。

また、ホテルにすれば必ず収益が上がるわけでもありません。改修費、運営の形、その場所の宿泊の需要によって、結果は大きく変わります。事務所のまま直して貸す場合や、今のまま売る場合と比べたうえで決めるものだと考えてください。

建物全体を一度にホテルにする必要もありません。空いているフロアだけを客室にして、ほかのフロアは事務所や店舗のまま使い続けることもできます。その場合、用途変更の確認申請が要るかどうかは、ホテルにする部分の面積で決まります。ただ、ホテルの部分ができると消防のうえでは建物全体の扱いが変わり、ほかのフロアにも設備が要ることがあります。ホテルとほかの部分の区切り方も含めて、建築と消防の両面で確かめます。今のテナントとの契約はそのまま続くので、工事中の音や人の出入りについても前もってお話ししておきます。

向いているビルと向かないビル

計画の早い段階で、次の点を確かめます。ここで引っかかる項目があると、設計を進めても実現できないことがあります。

  • 用途地域 土地ごとに、建ててよい建物の種類が「用途地域」として決められています。住居専用地域(低層・中高層)、田園住居地域、工業地域、工業専用地域ではホテルを建てられず、第一種住居地域でもホテルの部分が3,000㎡を超えるものは建てられない決まりです。都心の事務所ビルの多くは商業地域や近隣商業地域にあるので、ここで止まることはほとんどありませんが、最初に確かめておきます。
  • 階段の数 中小規模の事務所ビルは、階段が1つしかないことがよくあります。ホテルでは、1つの階にある客室の床面積の合計が100㎡を超えると、その階には原則として直通階段が2つ必要になります(主要な構造が準耐火構造か不燃材料でできている建物は200㎡)。階段を増やすのは大きな工事になるので、1フロアの客室の広さを抑えて計画することもあります。
  • 水まわりの通り道 客室ごとにトイレやシャワーをつくるには、給水と排水の配管を部屋ごとに通す必要があります。縦に通っている配管(縦管)の位置によって、客室の並べ方と工事の大きさが決まります。
  • フロアの形と窓 細長いフロアや、窓が一方にしかないフロアは、客室の取り方が限られます。窓のない部屋は客室として貸しにくいので、何室とれるかは、フロアの形でおおよそ見えてきます。
  • エレベーター 宿泊する人は荷物を持って上り下りします。エレベーターのない4〜5階建てのビルでは、上の階の客室が貸しにくくなるので、その分を見込んで計画します。
  • 建てた時期と書類 1981年5月以前に建築確認を受けた、いわゆる旧耐震の建物は、運営会社や金融機関から耐震診断(地震への強さを調べる調査)を求められることがあります。また、完成したときの検査済証が残っているかどうかで、手続きの進め方が変わります(この先で説明します)。
事務所フロアを分割してつくった客室
五反田の案件では、事務所として使われていたフロアを分割して客室にしました。

事務所からホテルに変えると厳しくなる決まり

ホテルは、不特定の人が泊まる建物として、事務所よりも厳しい基準が決められています。関係するのは主に建築基準法、旅館業法、消防法の3つです。

建築基準法

ホテルは建築基準法でいう特殊建築物にあたります。多くの人が泊まる建物なので、安全面の基準が細かく決められています。事務所をホテルに変える部分の床面積が200㎡を超える場合は、用途変更の確認申請が必要です。この面積は、2019年6月に100㎡から200㎡に引き上げられました。200㎡以下なら確認申請の手続きは要りませんが、ホテルとしての基準に建物を合わせなければならない点は同じです。

基準の中身では、先ほどの階段のほか、火事のときに煙を外へ出す排煙設備や、壁と天井の仕上げに燃えにくい材料を使う内装制限なども、ホテルとして求められる内容に合わせることになります。

旅館業法

ホテルとして営業するには、保健所に申請して旅館業の許可を受けます。2018年6月の法改正で、それまでの「ホテル営業」と「旅館営業」は「旅館・ホテル営業」にまとめられ、ホテルは10室以上といった最低客室数の決まりもなくなりました。客室の広さは、1室7㎡以上(ベッドを置く部屋は9㎡以上)が基準です。

フロント(玄関帳場)も、今は必ず置かなければならないものではなくなり、ビデオ通話などの設備で代えられるようになりました。ただし、求められる設備の細かい内容は自治体によって違うので、設計の前に保健所に相談しておきます。また、学校や児童福祉施設などからおおむね100mの範囲にある場合は、許可の前に学校などの意見を聞く手続きがあります。このほか、区によっては近隣への説明や標識の掲示を独自に求めていることがあるので、あわせて確認します。

消防法

消防法では、ホテルは特定防火対象物にあたり、事務所よりも多くの消防設備が必要です。たとえば自動火災報知設備と誘導灯は、建物の大きさにかかわらず設置が求められます。スプリンクラーは11階以上の階で必要になり、それより低い階でも面積によっては必要になります。

ホテルのように不特定多数の人が泊まる建物は、消防設備を今の基準に合わせるよう求められる範囲が広く、建てた当時の基準のままでよいとされる部分は少なくなります。消防設備の工事は費用に大きく響くので、所轄の消防署との事前相談は早めに済ませます。確認の進め方は「事務所ビルをホテルに転用するとき、最初に確認する5つのこと」でも書いています。

検査済証がないビルの場合

築年数の古いビルでは、完成したときの検査を受けておらず、検査済証がないことがあります。検査済証がないと、今の建物が法律に合っていることを示せないため、そのままでは用途変更の確認申請を進められません。

その場合も、すぐにあきらめる必要はありません。国土交通省の「既存建築物の現況調査ガイドライン」にもとづいて、建築士などが今の建物を調べ、法律に合っているかを確かめる方法があります。調べた結果、過去の増築などで今の決まりに合っていない部分が見つかった場合、多くは改修工事の中で直せますが、内容によっては使える面積や客室数を見直すことになります。調査には図面や当時の書類が要るので、手元にあるものを先に集めておくと話が早く進みます。

解体してスケルトンにしたフロア
恵比寿の案件。内装を解体してスケルトンにした状態から、客室をつくっていきました。

相談から開業までの流れ

私たちがご相談を受けてから開業するまでは、おおよそ次の順番で進みます。

  • 現地と書類の確認 建物を拝見し、確認済証(着工の前に計画が基準に合っていると確認された書類)や検査済証(完成したときに計画どおりにできていると確認された書類)、図面など、当時の書類がどこまで残っているかを確かめます。
  • ホテルにできるかの判断 用途地域、階段、消防設備、客室の取り方を見て、法律と工事の両面で成り立つかを判断します。
  • 収支の比較 ホテルに直した場合の改修費と見込める収入を、事務所のまま直して貸す場合や、今のまま売る場合と並べます。改修費の考え方は「ビル一棟の改修費用は、どうやって決まるのか」で書いています。
  • 設計と事前の相談 設計を固めながら、役所、消防署、保健所と事前に協議します。確認申請をする場合は、その審査の中で消防の同意も必要になります。
  • 工事 改修工事の前には、アスベストの事前調査が要ります。2022年4月からは一定規模以上の工事で調査結果の報告が義務になり、2023年10月からは資格を持った人が調査することも義務になりました。
  • 届け出と許可、開業 工事が終わったら、確認申請をした場合は工事完了の届けを出し、消防の検査を受け、旅館業の許可を得て開業します。

直して持つ以外の選び方

ホテルに向いている建物だと分かっても、オーナーが取れる道はひとつではありません。

  • 持ったまま直して、ホテルの運営会社に貸す 建物はオーナーのまま、改修した建物を運営会社に一棟で貸す形です。建物の修繕や設備の入れ替えをどちらが負担するかは契約で決めるので、貸す前にきちんと取り決めておきます。運営会社が決まっている場合は、設計の段階から意見をもらっておくと、あとで客室のつくりを直さずに済みます。
  • 直してから売る ホテルとして使える状態にしてから売ると、空室の多い事務所ビルとして売るよりも値段の付き方が変わることがあります。ただし改修費は先に出すことになるので、資金の手当てが要ります。
  • 今のまま売る 改修の資金や手間をかけたくない場合は、仲介で買い手を探すか、当社による買取を選べます。仲介は時間がかかるぶん相場に近い値段を目指せます。買取は早く現金にできるかわりに、値段は仲介より下がります。

どれが合うかは、改修にかけられる資金、借入の状況、いつまでに結論を出したいかによって変わります。納新は工事会社であり、宅地建物取引業者でもあるので、改修費と改修後の賃料、売った場合の見込みを同じ紙に並べてお出しできます。売り方の違いは「オーナー様へ」のページでもまとめています。これまでの改修の様子は「改修事例」でご覧いただけます。

まとめ

ホテルコンバージョンは、建物を壊さずに使い道を変える方法です。ただ、用途地域や階段の数、消防設備のように、設計に入る前に確かめておくべき点がいくつもあります。順番を間違えなければ、設計費をかける前に、できるかどうかを見きわめられます。

お持ちのビルがホテルに向いているかを知りたい、直す場合と売る場合を比べたい、といった段階でも構いません。現地を拝見したうえで、判断の材料をお出しします。

この記事は2026年9月時点の法令をもとに、一般的な考え方をまとめたものです。実際に適用される基準は、建物の条件や自治体によって変わります。

お持ちのビルがホテルに向いているか知りたい方へ

建物と図面を拝見し、ホテルにできるかどうか、直す場合と売る場合の見込みを並べてお出しします。ここまで費用はいただきません。

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